2015年10月9日金曜日

「海の本屋のはなし」を読んで

神戸元町にあった海文堂書店
僕は一度も行くことがなかったけど
「海にまつわる本が売っている本屋がある」とだけは知っていた
2013年、閉店するとこが決まった時
僕は何かのニュースでそのことを知った

潰れた後は「あの時、行っとけばよかったな」と思ったけど
「海の本屋のはなし」を読んで
それはちょっと違うかもな、と思った





著者の平野義昌さんは閉店時まで働いていた書店員さん
平野さんが綴る海文堂書店の99年間の流れ

「なんでこんなにいい本屋が潰れたのか」と数字を並べて語るのではなく
開店から閉店までの時間を語り
創業者、それを引き継いだ社員、店に来るお客さん
海文堂書店に関わった人とはどんな人だったのか
そこに店があったから起こった出来事
文章から人の動きが鮮明に見えてきて
読み終えると自分が体験してきたことのように感じた






海文堂書店には数字やマニュアルでは表せない接客があった
売り手と買い手、立場は真逆だけど同じ価値を共有していて
この店に来る人は皆、海文堂書店を必要としていたんだろう

「I LOVE YOU」を「月が綺麗ですね」と夏目漱石が言ったように
ある言葉を何かに例えて言うことができる人はいる
が、その曖昧な気持ちを的確に言える人はいないんじゃないか

皆それぞれ違うが、思うところは同じ
そこにいた人にしかわからない事で
それは皆が気付いてない、些細なことなんだろう






海文堂書店が皆に愛される良い本屋だったのは

働く人が本屋を良くするために働いていたわけではなく
本にまつわる環境を良くしようと働いている人がいたから
結果的に良い本屋になったんだろう


なんでもかんでも「つながり」という言葉を使うのは
語彙力のないところを隠せてないから嫌だけど
海文堂書店は本でつながりを作っていた

「今後、本を買うときはどうすればいいいいんや!」
「どう責任とるんや!」と怒られていたこと
「あなたの作る棚が好き」と言われていたこと
本屋、場所がなくなるということは大変なことだとわかった





自分のお気に入りの本屋、店をつぶさないためにはどうすればいいのだろうか
お店を援助できるほどの財力なんかない
ささやかな援助としてできるのは本を買うこと、通うこと

ありがたいことに僕らは自分で買う店を選ぶことができる
だから、なるべく自分のお気に入りの店で買うようしようと思っている






僕は大阪に来てから本屋によく行くようになった
本屋では多くの事を得る事ができる
文化、流行り、音楽、絵、写真
何のあてもなく来ても得るものが山ほどある

ネットの本屋はとても便利だ
欲しい本がすぐみつかりすぐ買うことができる
買えるものは山ほどある
でも、ネットでは買うことしかできない
ネットを批判ばっかりするのも気が引けるからあまり言いたくないけど

やっぱり本屋で買う方がいいと思う

本屋は買わなくても得るものがある
ただそこに通わなければわからない事が多いから
楽な方に行ってしまうのかもしれない
本屋に行けば欲しいとも思ってなかった本を見つけることができる



それの何が良いのかは僕は知らないけど


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