あと1冊、今日中に読めたら108冊。
108。煩悩と同じ数。読めるかな?
今のところ107冊のうち特に良かった本10冊を選んだ。
まだまだ良い本はたくさんあったけど、その中から厳選して選んだ。
そして当てにならないレビューを書いてみた。
・「夢の実現するところ 〜郵便配達夫シュヴァルの理想郷に捧げる」いしいしんじ 他
フェルディナン・シュヴァル、1836年生まれの実在したフランス人で勤勉な郵便配達夫であった。ある日、いつものように仕事を終えた帰り道、小さな石につまずいた。よく見ると魅力的な石だ。それから彼は帰り道に石を拾って帰るようになった。拾った石を持ち帰り、それをコツコツ積んでいく。とうとうそれは大きな大きな家となり、彼の理想宮となった。ただの郵便配達夫の彼が、誰かに馬鹿にされようとも構わず、33年の歳月をかけて築いた理想宮。彼はなにか特別な能力がなくても、自分の理想をもっていればいいと教えてくれた。この本は彼の自伝と写真、そして彼に向けた幾人からの手紙のような文が綴られている。皆、文章を書く仕事をしている人や何かを作っている人達だ。彼らは自分をシュヴァルさんに救われた石の一つだと思っているのかもしれない。何とない石も、目的を与えれば世界が変わる。何かをつくっている人、理想を持っている人におすすめ。
・「見仏記〈2〉仏友編」いとうせいこう、みうらじゅん
元々、神社仏閣を見に行くのが好きだったが、見るのは建造物や庭だけ。仏像には興味がなかった。何故か。「わからなかった」からだ。でも、この本を読んで変わった。みうらじゅん曰く、仏像はフィギュアなのだ。自由なポーズにしてストーリーを作る。こっちが勝手に想像して、自由に物語を作りながら見る。バックヤードを知ればもっと面白くなるけど、それよりも自分で想像した方が面白い。いとうせいこうとみうらじゅんの二人が「あーだこーだ」と自由にしゃべりながら寺を巡っていく。「見仏記1」のときはもう一人出版社の人も同行していたけど、<2>では二人だけで見仏にいっている。もはやただの趣味だ。男二人で地方の旅館に泊まったせいで、旅館のおかみさんからホモだと勘違いされたりもする。そんな、いちゃいちゃしたおじさん友情が詰まった一冊。仏像に興味がない人におすすめ。仏像は自由です。
・「たこやき」熊谷真菜
直径3~4cmの小さな球にドロッとした濃いソースがかかり。その上ではカツオブシと青のりが踊っている。つまようじで突き刺して口の中へ。はふはふ言いながら噛むとトロっとした液体とコリッと歯ごたえのあるタコ。口の中に通天閣やグリコの看板、大阪の町が広がっていく、、、お祭りの屋台では必ず1軒は目にする。友達の家でワイワイ言いながら作る。関西だけではなく全国に広まっている「たこやき」。しかし、たこやきの歴史を知っている人はいるだろうか?発祥地は?明石焼きとの関係は?そもそもなんであの形なのか?筆者が卒業論文として調べ始めたものなので、面白いかと聞かれたら。。。どうだろう?ただ、内容がすごく充実している。たこやきの成り立ちから、ソースの事、果てはたこ焼き用の鉄板の事まで綿密に調べ上げている。老舗のたこ焼き屋のおじいちゃんに聞いたり。ソース工場へ行ったり。鉄板の職人に話を聞いたり、と徹底している。他の文献の引用ではなく(そもそも、過去のたこやきの文献がない。)直接会って聞いたことを書いているので、文章にトゲや小骨がなく落ち着いている。たこやき一つから世情の流れ、時代の移り変わりを読み解くことができる。ウィキペディアのコピペで卒論を書こうとしている大学生に読んでもらいたい。
・「インターネット的」糸井重里
まず注意しておくと「インターネットの使い方・始め方」の本ではありません。インターネットを中心とした…(ちょっと違うなぁ)インターネットを介した(って言う方が近いかな?)外とのつながりのことが書かれた本です。ここ2・3年でSNSやコミュニティデザインといったものが急成長していて。実際に使ってみたり、その関連の本を読んだり、話を聞いたりして「あ、もしかしてこーいう風になっていってるのかな?」と予測のようなものを試みたりしたけれど。そのまだ形にもなっていないふにゃふにゃしたものの事が、この本の中にもうすでに書いてあった。「12年前にこんな所まで考えていたのか!」と、床は目から落ちたウロコだらけ。今、イトイさんは何を考えているんだろう?やっぱりすごい、イトイさん。
インターネットを使う人におすすめ。
・「株式会社 家族」山田かおり
ほぼ日で不定期に連載している「明るい家族相談室」で相談役になっている山田かおりさん。読んでると、人んちにあがってるような感じがする。自分の家では普通に起こってることが、他人からみたら「え?」って言われそうなことがある。その「え?」が集められた本。父は熱心にゴルフの素振りを研究し手帳に書く、ゴルフは全くしないのに。そして年がかわるとその手帳は捨ててしまう。その手帳を母がゴミ箱から拾って読む。かおりさんの妹のぐしゃぐしゃした挿絵がまた「山田家」の雰囲気を際立てている。反抗期のお子さんにおすすめ。
・「猫」井伏鱒二 他
猫好きの文豪達による、猫の話。明治~大正生まれの作家ばかりなので、本の中の空気がいい。あわただしくないし、少しマヌケな感じが可笑しい。しかしなんで文豪達は猫が好きなんだろう?
猫好きにおすすめ。
・「ファンタジア」ブルーノ・ムナーリ
アウトプットするためにはインプットなしでは成り立たない。子供の発想が自由なのはインプットの量が少ないせい。あくまでこれは僕の解釈ですが、たくさんの「気付き」が詰まっている。言葉で表しにくいこと、を難しい言葉説明するのは簡単。これはとてもやさしく教えてくれる。これを読んで僕は安心した。「子供の発想力に僕が負けるわけがない。子供のそれは足りないからだ。」と。自分のなかの想像力にもやもやしてる人におすすめ。
・「とりあえず、絵本について」五味太郎
小さな頃大好きだった絵本のひとつ「きんぎょがにげた」内容というより絵が好きだった。やわらかい色。当然、作者もやわらかい人だと思っていたら、、、違った。谷川俊太郎もそうだけど、パンクな感じ。決して、絵具を道路に巻きらしたり、筆で担当者を突き刺したりするわけじゃないけど。やわらかくない。どこかぶっとんでいる。作品でやわらかいものを出しているせいで、本人がやわらかくないのかな?ああ、ロッカーにナイーブな人が多いのと似ているのかもしれない。「きんぎょがにげた」「みんなうんち」「ことわざ絵本」等、五味太郎を読んだことある人におすすめ。
・「たのしい写真〜よい子のための写真教室」ホンマタカシ
フィルムのカメラとデジタルカメラ、使うのが簡単なのはどっちだと思いますか?答はどっちもです。「写真を撮る」だけならカバでもできそう。ただ、フィルムはめんどくさい。ピントを合わせたり、露光を気にしたり、現像するまでどう映っているかわからないし。でもそのぶん自由度や表現の幅はフィルムの方が圧倒的に勝っていると思います。シャッター速度と絞りの割合を変えるだけで違った表現ができます。、、、と。それらの方法が書かれているのだけど。それよりも「ホンマさんカメラが好きなんだなぁ」って思える本です。歴代の写真家達の手法、様々なクセのあるカメラ。どこかの飲み屋でウダウダ聞きたいような内容。フィルムカメラを使っている人におすすめ。
・「ぼくが電話をかけている場所」レイモンド・カーヴァー
村上春樹訳。村上春樹が影響受けまくってるなぁと感じる。僕は「言葉にならない感情を文章で表している話」が好き。“言葉にならない感情”を直接文字に置き換えているわけじゃなくて主人公が「あ~なんなんだろうこの感じ…」と、口に出しているわけじゃないけど感じているのを読んで「あ~そうそう、それな」って、味わいたい。スリルに満ちた冒険の話も良いけど、煙みたいに目で追っても正確な形をとらえられない内容の小説が好きだ。レイモンド・カーヴァーもそれで。「あ~なんかうまくいかないな~」とか「良くないのはわかってるけど、俺が悪いわけじゃないし」みたいな、短編が詰まった本。「やれやれ」と感じたい人におすすめ。